――本日のご相談は「電車に乗ったり高速道路に乗ると、パニック発作を何度か起こして乗り物に乗るのが怖いです。」というものです。
志保先生:はい。よくパニック発作になるというお客様がうちにもいらっしゃいます。
このパニック発作は、漢方では「心」の不調と考えます。漢方でいう「心(しん)」は、心臓だけではなくて循環機能と精神神経活動を受け持つ臓腑(ぞうふ)ととらえています。
「心氣(しんき)」といって「心」の機能低下や循環機能の低下によって、いわゆる「動悸」や「息切れ」といったことが起こります。また他に、「心血悪阻(しんけつおそ)」や「瘀血(おけつ)」といって、血液の滞りと考えるのですが、血液が滞ると急激にドキドキしたり不安感がひどくなったりします。
――原因のひとつとして、血液の滞りが考えられるのですね。
志保先生:そうですね。それで血液が滞るのにも原因がありますね。心臓というのは、血液がたっぷりないと安心できないんですね。
「心血虚(しんけっきょ)」といって心臓の血液が少ないと、不安感がひどくなったり胸が早鐘を打つような感じがしたり、「心陰虚(しんいんきょ)」といって、身体全体の潤い分がなくて栄養不足状態でも、バクバクしたり不安感が出たりします。
要するに心臓の血液やエネルギーが足りていない状態になると、不安感や急な胸のドキドキが起こったりします。足りていないと細い小川にチョロチョロとしか血液が流れていないような感じになります。滞ると「瘀血(おけつ)」といって、このような状態が起こります。
血液が滞って心臓の働きが阻害されたような状態のことを、漢方的には「心血悪阻(しんけつおそ)」といいますが、胸がバクバクしたり、「怔忡(せいちゅう)」といって心臓が飛び出しそうになるほど激しくドキドキしたり、胸の圧迫感があったり、胸痛といって胸が差し込むように痛かったりする場合があります。
でもそのような症状があって病院に行っても、心臓には異常がないと言われる方で、不安になって漢方薬局を訪ねて来られる方もいらっしゃいます。もちろん異常がある場合は病院での対処が必要です。
病院で異常なしと言われたら?
――心臓には異常がないと言われた時、病院ではどの診療科で診てもらうのですか?
志保先生:そうですね。心臓に異常がないですから、精神科に行っている方が多いです。心電図に異常が出る訳ではないので、やはり精神内科のようなところに行って安定剤をもらっている方が多いですね。