━━今回は「夜中に何度も目が覚めて、病院で女性の年齢に伴う不順と言われました。どうしたら良く眠れるようになりますか?」というご相談です。
志保先生:はい。眠れないというのが、まず年齢による不順と関係があるのかはお話を伺ってみないと分かりませんが、女性の年齢に伴う悩みを西洋医学では不定愁訴(ふていしゅうそ)といいます。
女性ホルモンが減る頃に、いろいろな体の不調を病院で訴えると年齢による不順に伴う不定愁訴だと言われます。しかし中医学でいうと、これらの状態は不定な愁訴ではありません。例えば「眠れない」というのであれば「眠れない」のだということで漢方をお出ししていきます。
━━とらえ方が違うのですね。
志保先生:はい。なので、この方がどのような原因で眠れなくなっているのか、もう少しお話を聞いてみないと分からないと思います。
━━夜中に何度も目が覚めるのは、漢方ではどのようにとらえますか?
志保先生:はい。考えられるのは、この方は「心血虚(しんけっきょ)」といって、心臓の血液が少ないタイプかもしれません。
眠れない状態というのは、「心(しん)」がとても関係していると漢方では考えます。心臓の「心」と書くのですが、この「心」というのは心臓の循環機能だけではなくて、精神活動や体のリズムを含む集約的なとらえ方です。
この「心」に血液がたっぷりと無いと、心臓は安心して眠れません。すると、夜中に何度も目が覚めるというようなお悩みが起こります。
あまりにも疲れ過ぎていて眠れないという場合には、このようなケースが考えられます。このような場合は補心薬といって、「心」の血液を補う漢方薬と、「安神作用(あんじんさよう)」といって落ち着くような漢方薬をお出しします。
眠れないことと血液の関係
━━眠れないことに血液が関係しているのですか。
志保先生:はい。または、女性が年齢を重ねると様々なストレスが加わって問題が出ていることもあるかもしれません。
女性の年齢に伴う不順ですが、「私はあった」、「私は全然無かった」とそれぞれですよね。その違いは何かというと、どなたでも女性ホルモンは閉経前後に減っていきます。そこにストレスが加わるかどうかでこうしたお悩みが変わってきますね。
━━女性ホルモンが減ることだけが原因ではないと。
志保先生:はい。50歳前後というのは、頑張ってきた子育てを卒業して、何となく寂しくなる時期であったり、親の介護が加わったりと環境の変化がある時期ですので、なにかしらのストレスが原因で年齢に伴う不順がひどく出たり、眠れなくなってしまうこともあると思います。
イライラのご相談の時にもお話させてもらいましたが、「肝氣鬱結(かんきうっけつ)」といって、肝臓の氣が滞って、イライラして眠れないタイプには、「疎肝(そかん)」といって、眠れない方に合うような漢方をもっていきます。
ですから、漢方薬はタイプによってお出ししますので、一概に眠れないからといって睡眠剤を出すわけではありません。その原因を紐解いて、なぜこの方は眠れないのかということを探って、漢方薬をお出ししていきます。
━━漢方では眠りの悩みのタイプによって対応を変えることができるのですね。
志保先生:そうですね。いつもお話していますが、病氣には必ず原因があって結果がありますから、その原因を紐解いていくのが漢方の特徴になります。例えば西洋療法をとられてもあまり合っていないなという時は、ご自分がどういう風に眠れないのかに目を向けると良いかもしれません。
「眠れない」と一口に言っても、イライラして眠れないタイプ、寝付きは良いけれど眠りが浅いタイプ、よく夢を見て何度も起きてしまうタイプ、あとは、おしっこが近くて何度も起きてしまうタイプなど、いろいろなタイプがあると思います。漢方なら、その方のお悩みに合わせていろいろな対応ができますよ。