――本日のご相談は「頭に熱感があって、最近イライラします。」というものです。
志保先生:頭に熱感があるということはですね、熱が上の方にこもっている状態なんですね。このイライラは「肝(かん)」というものととても関係があります。
漢方でいう「肝」は「疏泄(そせつ)」といって、気分や情緒、精神、感情の活動をつかさどっている臓器でもあります。それで「肝は疏泄(そせつ)をつかさどる」という言葉があるのですが、この疏泄というのは新陳代謝や血流の調節や氣の巡りみたいなものを指します。
そのようなものが上手く回らずに滞って、イライラするという状態が起こります。そしてストレスが長く続くと、肝の疏泄が上手くいかない上に熱がこもり出して、頭に熱感が出てのぼせてイライラするという状態になります。
これを漢方では「肝氣鬱結(かんきうっけつ)」といいます。要するに肝臓の氣が鬱結して熱がこもった状態と考えます。
その上にもう1つ、肝氣鬱結の状態が長引いてしまったり、さらに激しいストレスに襲われたりすると「肝火上炎(かんかじょうえん)」といって、肝臓が熱を持ち始めると考えます。そうするとイライラどころではなく、ちょっとしたことで怒りやすくなったりします。
例えば、脇腹から胸にかけて熱っぽくなり痛みが出たりして「胸脇苦満(きょうきょうくまん)」になったり、便秘になったりして、もう1つ熱感が強い状態になることもあります。
この方は熱がこもってイライラするということですから熱症状がありますので、火が燃え上がっている状態ですので、こもった熱を解放するような、そして疏泄(そせつ)といって肝臓の氣の巡りをよくしてあげることができますね。
長引くイライラ
――単なるイライラと、長引いているイライラというとらえ方があるのですね。
志保先生:そうですね。疏泄(そせつ)が上手くいかなくなって病気が長引いてしまうと、今度は「陰液(いんえき)」といって体のエネルギーや臓器を潤す液が少なくなってしまいます。そうするとお鍋に火をグラグラと焚いたような感じで熱感が出てきてしまいます。この状態を「肝陽上亢(かんようじょうこう)」といいますが、こうなると体が弱った状態になりますので、陰液を補うような漢方をもっていきます。一概に熱感があるといっても、いろいろな漢方がありますね。