━━今回は、お母さんからのご相談で、「中学生の娘が理由もなくイライラして、どうしたら良いでしょうか?」というものです。
志保先生:はい。反抗期の時期ということもありますが、ご多分にもれず、うちの娘も今そんな時期です。生理前にはなぜか親子喧嘩が勃発、みたいな感じです。もしかしたら、彼女のイライラは、考えてみるといつも生理前だな、というようなことがあることかもしれないです。
イライラが生理前ではないか?月経周期に関係しているのか?を観察してみても良いかと思います。月経前にはいろいろとバランスを崩しがちですから。
他の理由として考えられるのは、食べ物ですね。今の時代の子供は非常に食が乱れていますので、甘い物やジュースなどを買い食いしていないか注意してみてほしいです。
このようなものをたくさん取っていますと、骨からカルシウム分が溶け出してカルシウム不足になります。そうなると神経が過敏になりイライラして切れやすくなります。
━━糖分に注意が必要だと。
志保先生:はい。まずは中学生のお子様の食に注意してもらいたいと思います。
そして、月経前にイライラしがちになる理由ですが、早い子であれば小学生の高学年から生理が始まります。生理が始まるともともと血液が少ないタイプの方は、「血虚(けっきょ)」といって、血液不足になりやすいです。
血液が少ないタイプというのは、少し華奢(きゃしゃ)で色白で食が細い方です。口から取ったものが胃腸によって消化されて、血液や筋肉になっていきますので、やはり食が細いとどうしても血虚といって血液不足になりやすいです。
━━血液不足が関係するのですね。
志保先生:はい、そうです。肝臓の血液が少なくなると、血液と一緒に巡る氣も滞り「肝氣鬱結(かんきうっけつ)」状態になりイライラします。
そして、月経の前には特に血液を子宮に溜め込まなければなりませんので、血虚(けっきょ)の方は体の血液が少なくなってイライラします。
さらに月経で血液が外に出てしまうと、血液が無くなってしまいさらにイライラします。このように血液が無くなると悪循環になってしますよね。
それで、長い期間「肝氣鬱結(かんきうっけつ)」状態で血液が少なく氣が滞っているところに、お年頃でお友達関係や勉強などで強いストレスが加わると、「肝火上炎(かんかじょうえん)」といって、この肝臓の鬱結に熱が加わって、もっとイライラしたり怒りやすくなります。
その時は、肝臓の熱を冷ますような漢方薬を使わなければスッキリしないかもしれません。
月経が順調に来ているか
━━なるほど。
志保先生:ですから、「この子は肝氣鬱結(かんきうっけつ)かな?」と思う時は、月経が順調にきているのか注意してほしいと思います。
肝氣鬱結の特徴は月経が不定期で、長くなったり短くなったりすることが多く、他には月経の前に胸が張るという方もいます。胸が痛いほど張るという方もいますし、ひどい時は、子供を産んでいないのに乳汁が出る方もいます。
それは、肝の氣が鬱結している状態ですので、そのような時には、漢方では「疎肝解鬱(そかんげうつ)」といって、肝臓の氣の巡りを良くするような漢方を飲んでいただくと大分ちがってくると思います。
━━単に月経で血を失っているほかにも、別の可能性があるのですね。
志保先生:そうですね。漢方には臓器が感情を司る(つかさどる)という考えがあります。このイライラ、怒りというのは「肝(かん)」が司っていますので、肝臓の血液不足や疎肝作用(そかんさよう)が崩れてしまうとイライラしてしまいますね。
━━臓器が感情を司る(つかさどる)という考え方なのですね。
志保先生:そうです。中医学では、肝(かん)は怒り、心は喜び、脾胃(ひい)は思い、肺は悲しみ、腎(じん)は恐れ、をそれぞれ司ります。
例えば、思い悩むとストレスで胃腸を悪くされたり、若い時には平氣だったジェットコースターが、年をとり怖くなるのは、腎(じん)の衰えがでてくるからです。
また、肝臓に何らかの問題を抱えていらっしゃる方は、イライラしたり怒りっぽくなる方が多いです。
臓器とイライラが結びついているということを知っていれば、対策のヒントも得られると思います。
中学生の女の子さんにも、漢方の考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。また、学校でのストレスがあるようであれば、家族みんなで、解決できる方法を考えてさし上げるのも大切ですね。