━━今回は「抗うつ剤の眠気で復職できなくて困っています。どうしたらこの眠気がなくなるでしょうか?」というご相談です。
志保先生:もうそれは、抗うつ剤を止めるしかないですよね。抗うつ剤の副作用として眠気があるわけですから原因が明らかです。でしたら、原因を取り除くしかないですよね。
抗うつ剤で眠気が出る理由ですが、抗うつ剤は直接脳内物質に作用します。副作用には眠気がでてくるのですが、おそらくこの方は気分の落ち込みのために抗うつ剤をお飲みだと思います。
でも、落ち込みや不安を訴える大抵の方は、中医学的には「心」の失調ととらえます。中医学でいう「心」は心臓だけでなく血脈や精神中枢を司ります。「心血虚(しんけっきょ)」といって、血液が少ないことが原因でうつうつとする方が多いのです。脳ではいろいろと考える時に血液を消耗します。血液が少ない状態ですと、例えば、物事をマイナスにしか考えられない、元氣がない、やる氣がしないという「氣虚(ききょ)」という状態が起こります。
血液の少ない状態での抗うつ剤の影響
志保先生:血液が少ない状態で不安な状態になっているのですが、医薬品というのは血中に乗って効きます。少ない血液のところに薬が乗ってきてしまうわけですから、血虚(けっきょ)の人が抗うつ剤を飲んでしまうとすごくよく効きすぎてしまいます。
━━なるほど。
志保先生:そうすると、眠気という副作用が強く出てしまいます。血液が少ないためにうつうつとした不安な状態になっているわけですから、その場合に根本的にカラっと元気になりたいのなら、漢方的には「補血薬」といって、血液の絶対量を補うことで気分の落ち込みを癒やすものがありますから、そういう対応も考慮に入れておいてもよいかもしれませんね。
━━では、西洋薬の抗うつ剤には、そのような眠気の副作用がある薬しかないのでしょうか?
志保先生:はい。ほとんどの薬に眠気という副作用があります。ただ、胃薬など潰瘍の薬で抗うつ剤となるものもあるので、すべてにおいて眠気という副作用があるというわけではないですが、精神疾患の薬のほとんどには眠気という副作用があります。