2017/10/10

めまいがあり自律神経失調症と診断されたのですが、何が原因でしょうか?

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━━今回のご相談は40代後半の方からで、「めまいがあり自律神経失調症と診断されたのですが、何が原因でしょうか?」というものです。

志保先生:まず、「何が原因か?」という前に、めまいが自律神経失調症という考え方が、もしかしたら漢方とはずれているかもしれません。

この西洋医学でいう自律神経失調症という病気は、どのような時に名前が付けられるかというと、原因が分からない時に付けられる病名なんです。

この自律神経失調症とはどのような仕組みかというと、脳の中には間脳の視床下部という部位があるのですが、ここから自律神経の交感神経と副交感神経のコントロールを行っているんですね。ここに睡眠中枢、食中枢、ホルモン調節中枢、水分の代謝、体温調節など様々な中枢がそろっています。

そしてこのバランスが崩れると、臓器のいろいろなところに不調をきたすので、自律神経失調症という簡単な病名がつけられるのです。ですから病院に行ってあれやこれやと状態を訴えますと、ほとんどの場合、自律神経失調症と言われて、抗うつ剤、安定剤が出されるというのが一般的な流れですね。

━━なるほど。

それで、「原因はいったい何か?どこへ行ったら良いのか?」と思いながら抗うつ剤、安定剤を飲んでも治らない時に、ようやく漢方薬局にたどり着くという現状になっているように思われます。

 

西洋医学と漢方の見立ての違い

 

志保先生:めまいの原因は西洋医学的には、内耳の平衡感覚に障害が起こったり、三半規管にリンパ液が溜まって平衡感覚がとれていないと考えます。このため内耳の血流を良くする薬やビタミン剤や利尿剤が出されることが、一般的な西洋薬としての処方になります。

しかし、漢方ではめまいは自律神経失調症ではありません。

━━そうなんですか。

志保先生:はい。「めまい」はあくまで「めまい」なんです。「めまい」という名前があるのですから「めまい」なんです。

━━ということは、ご相談の方のめまいが自律神経失調症だと診断されたことは、西洋医学の見立てということなのですね?

志保先生:そうですね。一般的にいうと西洋医学の見立てになりますね。漢方では「めまい」という状態がありますから、「めまい」という見立てになりますね。そこで原因のお話になってくるんですね。なぜ、めまいになっているのか?

 

漢方におけるめまいの原因

 

志保先生:なぜめまいになっているのか?ですが、原因が様々ですので、すべてのめまいが内耳の血流を良くしたり、ビタミン剤や利尿剤を服用したりしても、全部が全部対応できるわけでもないんですね。もちろん内耳に水滞があって、平衡感覚がとれない場合はその方法で効くかもしれません。

━━では、漢方では、めまいの原因はどう考えられているのですか?

漢方的にはめまいの原因は大きく分けて3つあります。

例えば「血虚(けっきょ)」といって血液が少ないタイプですが、このような人は脳貧血状態でフラリとめまいがします。よく女性にありがちな、ちょっと立ち上がってフラリとする、あるいはめまいがして朝礼でパタッと倒れる、これがいわゆる脳貧血です。脳に血が少ないタイプのめまいです。

それから病院の処方と考え方が似ているのが頭のむくみ、「水滞(すいたい)」ですね。頭に水が溜まってめまいになる。特徴としては、グルグル回転性のめまいになることがとても多いです。

また船に揺られているようという表現をされる方もいます。忘年会でビールをがぶがぶ飲んで上手く水がはけなくて、翌日にグルングルンと目が回るということがあるんですが、こういうめまいは、水滞(すいたい)といって頭の水の流れが滞っていることが原因のことが多いです。そういう時は利水作用のある漢方を飲みます。

 

生活習慣などによるめまい

 

志保先生:あともう1つ別の原因があります。これは「痰湿(たんしつ)」といって、水分代謝の異常で、余分な水分が局部にたまってできる痰という物質。この新陳代謝の低下により生じるドロッとした痰が体内にたまるとめまいがしたり、精神疾患を起こしたりします。この痰が溜まる原因としては、ストレスが多い、睡眠不足、胃腸虚弱、甘い物、脂っこいものの食べ過ぎなどが考えられます。この「痰湿(たんしつ)」が原因でめまいがする場合には、化痰薬といって「痰湿」の方に合わせた漢方薬をお出しします。

血液が足りない、お水の代謝が悪い、そしてもう1つ、痰が体に溜まっている。めまいには大きく分けてこの3つの原因が考えられます。これ以外にも漢方的に見立てた原因がありますから、原因に合わせて漢方薬をもっていくのが漢方中医学の考え方です。

━━ずいぶん西洋医学とはちがいますね。

志保先生:というか、西洋医学には先ほどお話した薬しかないということが現状ですね。しかし、必ず病気には原因があって結果があります。すべてにおいて物事もそうですが、原因がないと結果は出ないんです。病気には必ず原因があるはずです。その原因や体質を紐解いていくことが漢方でいう「証を見分ける」ということになります。

━━これは、めまいに悩まれている方が、ふだん西洋医学のクリニックさんに通っていたら、ずっと気がつかないことかもしれませんね。

志保先生:そうかもしれませんね。漢方では「めまい」は「めまい」という病気として扱う、というところ、しかもそのめまいにはそれぞれ原因があり、それに合わせた漢方があるということをもっと皆さんに知ってもらいたいですね。

病気になる前に、ちょっとおかしいという段階で、何かフワフワするな、という手前で漢方に出会うと、医療費も減って、深い病気になることがすごく減ると思います。

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