━━今回のご相談は「新しい職場で緊張から自律神経失調症になり、手がふるえて困っています。」というものです。
志保先生:まず、この方に行ってもらいたいのは脳ドッグです。ご自分で病気を判断なさって、もし何か大変な病気だったりすると困りますよね。脳血管の異常などでも手のふるえは起こりますので、まず脳ドッグに行かれたことがあるかどうか。
緊張して、それが本当に神経の異常で手がふるえるという、漢方で対応できるものであれば良いのですが、脳に何かしら異常をきたしてということがあると困るので、まず脳ドッグに行かれることをお勧めします。
自律神経失調症ということは、安定剤としてある種のお薬を飲んでいるかもしれません。それを長期間服用していると、手のふるえという副作用があります。
自律神経失調症と診断されよく出る西洋薬には、副作用でふるえが出るものもあります。ですから、その点もよく確認していただきたいと思います。脳の異常であれば、その専門の先生に診てもらう。また、特定の薬が原因であれば、そのお薬を止めれば手のふるえは止まると思います。
漢方から見た手のふるえ
━━手のふるえが、自律神経失調症の症状とは限らないのですね?
志保先生:はい。そういうことがあり得るということです。病気というのは自分で判断するべきではないと思います。
もしその方が緊張で手がふるえるということであれば、漢方的には「肝風内動(かんぷうないどう)」という状態です。「肝風内動」とはどのような状態か。
ふるえの動きから見て、風が木の枝をふるえさせているようにみえますよね。
中医学には、「筋は肝なり(きんはかんなり)」という言葉があります。この「肝」というのは漢方では肝臓だけを示すのではなく、筋肉、目なども「肝」の経絡に属するのですが、肝は筋に栄養を司ってもいるんですね。ということは、肝臓の血液が無ければ筋肉は潤わずにふるえをおこす、内風をおこすのです。
━━なるほど。
志保先生:要するに、肝臓の血液が不足したり、体の中の潤い分が不足する事を「陰虚(いんきょ)」「陰血不足」というのですが、筋に潤い分が足りなくなると筋が硬直し、痙攣(けいれん)したりふるえを起こしたりするのです。
それで、ご相談の方は緊張から自律神経失調症ということであれば、「肝血虚(かんけっきょ)」といって肝臓の血液が少ないかもしれません。血液が少ない状態であれば、この前お話したこともあると思いますが、物事をマイナスにしか考えられません。そうなると緊張して手がふるえるというような状態が起こりますので、肝血を補うような漢方を飲んで、まず筋を潤わすことが必要です。
━━ご相談の方が自律神経失調症という病名だということは、たぶん西洋医学の治療をしていらっしゃるのでしょうね。
志保先生:きっとそうだと思います。そうすると漢方にご縁が無ければ安定剤を飲むことになると思います。