――今回のご相談は、「仕事がとても忙しいのが一段落したと思ったら、今度は全くやる氣がなくなってしましました。自分はうつなのでしょうか?」というお悩みです。
志保先生:はい。「うつなのでしょうか?」という問いかけの「うつ」ですが、私はとても定義が難しいと思います。
やる氣が無いという状態は漢方的には、初期の段階では「気虚(ききょ)」ととらえます。例えば、やる気が無いけれど、家から外へ出て友達と遊びに行けたり、買い物には行ける、というのであれば、私は「うつ」とまではいわないと思います。
仕事が忙しかったということは、この方はそこに至るまでに氣を消耗しています。
漢方的にこの氣というものは、元氣であったりやる氣であったりする訳ですが、要するに体を動かすエネルギーなんです。
その氣を消耗し過ぎると、やはり体を使いすぎると疲れやすいのと一緒で、全てのエネルギーが無くなってしまいます。その氣を補わずに仕事の忙しさにかまけて、自分の体を補わないまま仕事をやり続けてしまうと、このような状態がホッと緊張から解放された時に起こります。
例えば、仕事を辞めた途端に病氣にかかった、退職した後に重たい病氣にかかってしまったということをよく聞くと思います。
ホッとした時は毛穴が開いて氣が緩むんです。そうするとそこから「風邪(ふうじゃ)」というか病氣が入ってきやすかったりします。でもそれには必ず原因があって、それまでに何かしら積み重ねていないと病氣にはなりません。
なので、もしかしたらこの方が気虚(ききょ)になる原因として、胃腸が虚弱で食べたものが消化吸収できず元気になれない、ということも考えられますが、やはりそれを補ってあげなかったことが原因ではないかと思います。